『純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語』というタイトルそのまんまの内容の小説を読んだ

『純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語』というガルシア=マルケスの小説を読んだ。どういう話かというと若くて純真で美しいエレンディラが残酷で自己中心的で金勘定に細かい祖母に、ある事件をきっかけに借金を背負わされて買春を強制され奴隷のように搾取されるという理不尽な話だ。タイトルに偽りはなく、信じ難くも痛ましい物語になっている。

エレンディラはシンデレラではない

面白いか面白くないか、それをまず言うと面白い。若くて綺麗な少女が年老いた祖母にいじめられていたら、素敵な王子様や魔法使いが現れて彼女を救うような楽観的な展開を多少は期待してしまう。しかしそういうディズニーアニメ的なお約束は、この物語では全く通用しない。それでも『エレンディラ』は面白い。読者の予想を裏切り、どんどんと悪化していく状況に目が離せなくなる。

漫画にするなら漫☆画太郎先生で

エレンディラを漫画にするなら是非漫☆画太郎にお願いしたい。とにかく「ババア」が強くて強烈な物語だ。殺そうとしても死なないような強烈な「ババア」を描ける漫画家といえば漫☆画太郎だ。冗談のようだが、案外普通にいいかもしれない。あと漫☆画太郎は美少女を書かせたら本当に可愛い絵を描く。

ChatGPTによって生成された漫画風のイラスト

共感はできないが印象には残る

真面目に考えると理不尽に借金を背負わされ、売春を強制されるエレンディラの人生はあまりにも悲惨だ。しかしこうした悲惨な人生に本当に共感して読めてはいない。何かできることはあるはずなのに何もしないエレンディラにイライラしていた。どうしてたった一人の老婆に服従しているのだろうと不思議でならなかった。さっさと祖母を殺してしまえと思っていた。殺さなくても逃げるくらいはできただろう。若いエレンディラの方が足も早いだろう。それでもエレンディラは全く逃げようとしない。

しかしこの全く共感できない従順さがこの物語の核心なんだろう。エレンディラは純真で無垢でどうしようもなく愚かだ。しかし実際にそういう人間もいるし、人生のある瞬間にそういう状態になることもある。だから『エレンディラ』は多くの人の印象に残る物語になっている。

買うときよりも捨てるときのほうが大変

引越しの前に少しでも荷物を減らしたいので、いらないものを処分している。

ジモティーで引き取ってもらったり、メルカリで売ったり、粗大ゴミに出したりした。長年使われていないIKEAで買ったフォトフレームを分解して燃えるゴミとして捨てたりもした。体力も使うし、結構時間も使っている。

買う時は簡単で、たとえばAmazonを使えばスマホやパソコンを数回操作するだけで早ければ翌日には到達する。買って届くまではAmazonの力で最適化されている。一方で捨てるときはAmazonは何もしてくれないので、何日もかけて苦労して捨てている。

昔に比べればジモティーやメルカリのようなサービスができたり、粗大ゴミ申請がwebでできるようになっていたりして便利にはなっている。それでも大変。

Google日本語入力の誤変換が多すぎるのでmacOS標準の日本語入力プログラムに変更した

長いことGoogle日本語入力を使っていたが、誤変換が多すぎるのに我慢できなくなりついに乗り換えた。

数年前から世間では、Google日本語入力があまり賢くなくなったのではと言われており、自分の実感としてもそうだったが惰性で乗り換えていなかった。

仕事もプライベートもメインはMacなので、macOSのデフォルトの日本語入力プログラム(旧ことえり)に変更した。

ブログのような日常的な文章の場合、かなり正確に変換してくれる。スペースキーを押すことなく勝手に変換をしてくれるライブ変換機能を有効にしているので、キーのタイプ数も回数が減って効率が良くなった。

support.apple.com

一方で固有名詞や専門用語に関しては、あまり得意でない印象を受けている。何回か入力したら学習してくれるのかもしれないが、よく使う固有名詞や専門用語に対しては辞書登録をするのがいいかもしれない。

総合的に考えても、誤変換が減ってキーボードで日本語の文章を書く効率が良くなり満足している。

映画日記 哀れなるものたち

数年前までは、値上がりするものといえばタバコぐらいだったが、いまでは何でも値上がりしている。映画もいつの間にか2000円だ。

週末の午後8時、映画館で『哀れなるものたち』を見た。映画がハズレだったら残念だが、『哀れなるものたち』はアタリだった。

家のプロジェクターで映画を見ても途中で気が散って中断してしまうし、映画館で集中して見る体験はやっぱりいい。

哀れなるものたち

『哀れなるものたち』は科学や医療技術が現実とは違う形で発達してる19世紀〜20世紀初頭くらいのロンドンとその周辺が舞台だ。作中の衣装や内装を含めたスタイルが特徴的で、なかなか楽しい。スチームパンクが好きな人は好きかもしれない。

ロンドンに住む風変わりな天才外科医であるゴッドウィン・バクスター(ゴッド)が、ベラという女性を育てていて、ベラは体は大人なのだが知能や振る舞いは子どものようで、実はベラはゴッドによって死体から蘇生されてた人物で……というところから映画は始まる。

ゴッドは死体を拾って手術をする外科医ということで、有名なイギリスの外科医ジョン・ハンターを思い出させる。ゴッドはなによりも科学の進歩を重要視するキャラクターとして描かれる。

ベラは最初は子どものような喋り方しかできなかったのが、旅をして経験を積むことで、どんどん知能が高くなっていく。語彙も増えていき、いつのまにかインテリたちとカントの哲学についての会話をするほどになり、ゴッドのように科学や進歩を信奉する人物に変化する。

作中でベラが何度も経験的に empirical、という言葉を使っていた気がする。白紙の状態で生まれて経験によって知識が積み重なり人格が形成されていくベラは、経験論的な思想を体現したキャラクターなんだろう。

現代人から見ると素朴すぎる科学主義・進歩主義・経験論的なキャラクターたちがレトロな雰囲気を醸成していて楽しい。

超広角そしてクロースアップ

超広角レンズのショットがいくつもあって、それが印象的だった。この超広角が監督の好みというかスタイルでもある。映画の雰囲気をもあっているし、安っぽくなく、悪くないと思った。

望遠レンズのほうが歪みが少ない分、洗練された絵になる。あえて歪ませることで映画の奇妙さを作り出している。この奇妙さが、この映画のキモなんだろう。

特にクロースアップが多用されていた印象はないけど、オチの直前のヤギの顔のクロースアップは印象的だった。 ちょっとふざけただけかと思ったら、オチにつながっていた。 くすっと笑えるようなカット割りだった。

あとメトロポリスの有名なカットのオマージュがあったりして、他にも映画好きが喜ぶようなオマージュのシーンがたくさんあるらしい。というのをネットで見かけた。

女王陛下のお気に入り

『哀れなるものたち』がよかったので、同じ監督の一つ前の作品である『女王陛下のお気に入り』も見た。これもいい映画だった。こっちでも超広角ショットがあって、監督のスタイルなんだということを理解できた。

ちなみに『哀れなる者たち』も『女王陛下のお気に入り』もイギリスが舞台だが、監督のヨルゴス・ランティモスはイギリスではなくギリシャ出身だ。いわれてみると外国人が好きそうなイギリスを描いている気がしなくもない。

スマホサイズの電子ペーパー端末 Boox Palma を手に入れた

電子書籍リーダーとしてBoox Palmaを購入した。期待以上の使い心地で、かなり満足している。

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片手で持ててポケットに入る大きさがいい

Palmaはスマートフォンのような6.13インチの縦長の電子ペーパーディスプレイを搭載している。普段使っている Pixel 6 とほとんど同じなので、手に持った感触も近い。ベゼルの幅が広いのでディスプレイサイズが6.4インチのPixel 6 よりもPalmaのほうが本体サイズが少し大きいが、本体重量はPalmaのほうが軽い。

電子書籍リーダーといえばタブレット型のイメージがあったので、スマホサイズで読みにくくないか不安だったが、小さくて不便ということはなかった。体験としては文庫や新書を読んでいるときに近い。

むしろこれくらい小さいほうが片手で持てるし、ポケットにも入るので便利だ。

Boox Palma

電子ペーパーの性能が進化している

電子ペーパーの端末としては2つ目。1つ目は2013年に購入したKindle Paperwhiteだ。反応速度が遅くて使い勝手が悪いため正直ほとんど使っていなかった。その印象が悪かったのか、それ以来電子ペーパー端末は購入していなかった。

比較対象が10年以上前のKindleなので当然だが、かなり高性能になっていた。

まず単純に画面が綺麗。解像度は300dpiで小さい文字もはっきりと表示される。白黒のコンストラストが高く、白いところははっきりと白い。少し前のモデルのBooxのカラー電子ペーパー端末と比べさせてもらったところ、Palmaのほうが白黒のコンストラストが強かった。

反応速度も早い。YouTubeの動画を快適に見ることは無理だろうし、Twitterの高速に流れるタイムラインを見るのにも向いていないと思うが、むしろそれがいい。落ち着いて文章を読むことに集中できる。

ソフトウェア

OSはAndroidAndroidのアプリをインストールすることができる。KindleだけではなくPlayブックスもインストールした。電子書籍は基本的にKindleで買っているけど、Amazonのアカウントが停止されるリスクもあるし、選択肢は複数あったほうがいい。

デフォルトの日本語入力が使いづらかったので、Gboardもインストールした。これで使い勝手がだいぶ改善された。

あとはパスワード管理ソフト、ブラウザ、メモアプリ、Dropboxなどのクラウドストレージアプリもインストールした。Android スマートフォンで使っているアプリがそのまま使えるのはうれしい。

Android ではあるが、Boox独自の電子ペーパーに最適化するための機能が乗っかっている。

アプリごとにリフレッシュモードを変更できる。リフレッシュを高速にするほど電子ペーパー特有の残像が残る。なのでブラウザのような画面の動きが大きいアプリでは高速リフレッシュして、電子書籍アプリのような動きの少ないアプリではリフレッシュは低速にして残像は減らすという設定が可能だ。

アプリごとの調整機能

面白い機能として、スクリーンセーバー設定の「透明スクリーンセーバー」という機能だ。Booxは電子ペーパーなのでロック画面でもディスプレイに表示を残したままにできる。透明スクリーンセーバーとは、ロック画面でも表示をそのままにするという機能だ。

この機能をスクリーンセーバー呼ぶことに違和感を覚えるが、ともかくこの機能によってロック解除しなくても前に開いていたページを読むことができるのは便利なので使っている。

透明スクリーンセーバー

あえて不満を上げるとしたら

期待以上の使い心地の良さに満足しているが、あえて1つ不満を上げるなら指紋認証などの生体認証の機能がついていないことだ。頻繁に認証を求められるデバイスではないが、アプリにログインしたり電子書籍を購入するときに認証を求められることがあるので、指紋認証などの生体認証機能がついていたら便利なのにと思うことはあった。

まとめ

Boox Palma は高性能な白黒電子ペーパーディスプレイを備え、汎用的なAndroid OSに電子ペーパーに特化したソフトウェアを搭載している。

文章を読むことに特化した電子書籍リーダーとして十分に実用的で完成度が高い。

PalmaがよかったのでタブレットサイズのBooxもほしくなった。10インチの Boox Note Air3 C あたりがいいだろうか。最新のカラー電子ペーパーがどの程度使い心地がよいのか試してみたい。